東北の祭り | 岩手県陸前高田市気仙町の「けんか七夕」
岩手県陸前高田市気仙町の「けんか七夕」は、900年の歴史を持つお祭りです。太鼓の乱れうちと共にロープを引っぱり合い、杉の丸太がくくりつけられた山車をぶつけ合います。東日本大震災の際に4基あった山車のうち3基が津波で流され2011年は1基で巡行。2012年に新たに1基が新調され、2013年には震災前と同じ場所でのけんかが実現しました。

織り姫と彦星が天の川を渡って会える特別な日。そんな旧七夕に盛大に「けんか」が行われると知って気仙町まで車を走らせます。被災の影響が大きいこの一帯は、沿岸部に近づく程に仮設の建物が増え、途中で復旧工事を見かけました。

遠くの方に見える木は、震災の津波に耐え残った“奇跡の一本松”です。

けんか七夕は昼と夜の2度に渡って開催されます。私たちは夜6時過ぎに着いて夜の部に参加。お囃子の音と焼きそばの匂いのする方に、すいこまれていくチームハラペコ。

木で組まれた諏訪神社の鳥居。

この建物はしょうゆ・みそ製造会社「八木沢商店」旧店舗。建物の前がけんかの舞台です。

けんかがはじまるまでは、近づいて山車を見ることができます。




紫色の気仙組の山車。灯籠には震災前の町の地図が描かれています。

桜色の今泉組の山車。2台のロープを互いに引っぱりあって山車をぶつけあう「けんか」。当日の飛び入り参加も可能です。2回の対決のうち、1回目は見学して2回目に参加することに。





綱を手に持ってけんかの合図を待つ少しの間に、前にいたおばあさんが少しお話をしてくれて、震災の時のことを教えてくださいました。「何とも言えない」とつぶやかれた後に「おじょうさんにあげるよっ」と、クルッと私に手ぬぐいを巻いて去っていかれました。それは地元の方に配れた今年のけんか七夕の手ぬぐいでした。

歯止めを外せ。構えて!

よーい!はじめっ!!!







お囃子や山車の準備をしながら、次のけんかを楽しみに待ちながら、このお祭りはいつも気仙町のまん中にあるように感じました。山車と山車ががドスンとぶつかる瞬間はとても豪快で、歓声につつまれて願い事も叶いそうにみえたし、そんな威勢のよさや強さをこの場所で体験して、やっと「けんかと七夕」という組み合わせがすーっと理解できたのでした。この日がお祭りとなっている地区が多かったのか、遠くの方では花火があがりました。「ほらぁ、見てごらんなさい。私たちのために花火もあがりましたよー」なんてアナウンスがありましたが、そんなかけ声やけんかのあおり声、会長さんの毎年恒例のお話がより一層お祭りを楽しくさせていました。※会長のいつもの台詞は行った時に聞いてみてほしいので内緒です。少し気になることでは、今年のお祭り会場となっている気仙町の今泉地区は、復興事業でのかさ上げが予定されていて、来年以降は同じ場所でのけんか七夕の開催ができるかは未定だそう。これから時々今後のお祭り情報もチェックしてFacebookページでお伝えしていきますね。是非一度色んな方に気仙町のけんかを体験してみてほしいと思います。[text : 東北STANDARD 川路あずさ]