東北STANDARD

カネイリミュージアムショップ

協賛: キヤノンマーケティングジャパン株式会社

秋田県角館

樺細工

「樺細工」は、山桜の樹皮を素材につくられる工芸品です。
今から約230年前、城下町角館で武士の手内職として奨励され、
藩主の手厚い保護の元、地場産業として根付いてきました。
世界でも類をみない、秋田県を代表する樹皮工芸です。

山桜(ヤマザクラ)の樹皮

山桜の樹皮がもつ、独特の光沢や、しなやかな強度、抗菌・除湿効果を活かして、古くは薬籠や喫煙具、現在は茶筒等の日用品がつくられています。

「藤木伝四郎商店」の藤木浩一さんを訪ねて秋田県仙北市角館へ。胴乱と呼ばれる喫煙具を仕入れて販売した初代伝四郎。江戸末期から引き継がれ六代目となる現在では、茶筒、盆などのテーブルウェアの製造に加え、国内外に向けた展開をされています。

― 樺細工職人は現在何名程いらっしゃるのですか?

産地全体では多くても100名はきっていますね。藤木伝四郎商店でお取引させて頂いている職人さんは25名程になります。

― 普段ご自分で使われている製品はありますか?

私が使っているのは茶筒ですね。お茶のもちがすごくいいんですよ。防湿、防寒、密閉性の良さが、茶葉の保存には最適ですね。

― 商品づくりの基準にされている条件はありますか?

いい素材、品質、デザイン。この3つが全て満たされなければ、商品は売れないと思っています。

― いい素材とは?

皮だと何でも使えるということではないんですね。原材料に関しては過酷な状況で育った山桜のみが良質だと言われます。栄養がたくさんある山や、温室育ちの甘えて育った桜からはいい皮がとれないと。これは私どもの仕事にも通じると思っています。

― その環境では、なぜいい皮がとれないのでしょうか?

栄養がたくさんある環境では木の成長が早くなり、皮の成長がそれに追いつかないので、ひび割れてしまい素材に使えないということです。寒い北国では良質な樺がとれやすい為、樺細工づくりに適していますね。

― 素材の善し悪しによって、つくる製品を変えることも?

良質な山桜の皮の入手を心がけていますから、そういったことはあまりありません。

― 商品を流通させていく時に意識されていることは?

お客様に正確に伝わらないと売れていかないですね。今はターゲットの顧客層やお店を決めて、そこにおいてもらう為の商品開発をしています。どこにでも売ろうと思うと、つまらない商品ができてしまいますよね。

― 販売先を海外に広げることになったきっかけは?

先鞭をつけたのは先代社長の父でした。今から約30年前にサンフランシスコの商社と取引を始めました。世界の市場も大きいと考え、今から約5年前に本格的に輸出に着手しました。そして2年ほど前、国際電話が鳴りました。クレームだと思いましたが、パリ在住の日本人の方からで、商品をパリの友人へのお土産にしたところすごく喜ばれたと。ご本人にお礼を言いたくてとわざわざ電話をかけてきてくれたんです。とてもうれしく思いましたね。それが改めて国内外での発信をめざしたきっかけになりました。

― 海外での販売について意識されていることは?

手づくりなのでそんなに沢山はつくれないんです。そういいながらも、良いものを一つだけつくって特定の方に売るビジネスではないので、ある程度の量をつくらないと海外展開は厳しいと思っています。海外展開に挑戦されたことのある企業で失敗となる多くの原因には、せっかくオーダーを頂いた時に対応できないことがあるかと思います。船便やエア便にのせる最低単位に応じられないと、ビジネスチャンスを失ってしまいますよね。数もつくり品質も妥協しないということは、いわば相反することなので一番難しいことです。うちの会社では日本と海外で売れる時期となる繁忙期が、ちょうど半年ずつずれていることで海外展開が可能になっています。

― これから目指したいものづくりは?

手づくりだからこそ、樺細工の産地は角館だけなんです。技術的にもオンリーワンだということを活かして、国内外問わず販売し、グローバルスタンダードを目指したいと思っています。

藤木浩一(ふじきこういち)

1962年秋田県角館町生まれ。秋田県在住。明治大学経営学部経営学科を卒業後、株式会社西武百貨店勤務を経て、1989年に株式会社藤木伝四郎商店に入社。2001年に同社代表取締役社長に就任し、6代目を務める。

藤木伝四郎商店

住所 : 秋田県仙北市
角館町下新町45番地
電話番号 : 0187-54-1151
http://www.fujikidenshiro.co.jp/

※東北STANDARDのwebショップに移動します。

  • 南部裂織
  • 堤焼
  • 八幡馬
  • 山形鋳物
  • こぎん刺し