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岩手県平泉

秀衡塗

「秀衡塗」の呼び名は中尊寺(平泉町)や、その周辺に伝わる「秀衡椀」がもととなります。
藤原秀衡の時代に金色堂造営のために、京都から招いた工人達によってつくられた、
豪華絢爛の金色の椀が「秀衡椀」の起源であると伝えられています。
源氏雲や吉祥などの紋様に、菱形の金箔が施されたものが伝統的な意匠で、黒・朱・金が基調となっています。

平泉にながれる黄金文化

平泉周辺では浄法寺漆と、みちのくの金の特産の地でもあったことから、金色堂や秀衡椀など、金箔を用いた造形が生まれたと考えられています。

中尊寺から徒歩5分の好立地にある、秀衡塗専門店「翁知屋」。工房と店舗を構え、伝統的な定番商品と新製品をつくる工程から店頭販売までの、全ての工程を担当する、翁知屋店主の佐々木優弥さんを訪ねてお話を伺いました。

― 秀衡塗のお仕事をはじめられたきっかけは?

今から8年前位に親父が亡くなった時に、急遽家業の漆器屋を継ぐことになりました。もともと衣川村(現奥州市)の増澤集落で代々漆器製造をしていまして、ダムの建設に伴い平泉に越してきて、おじいさんが 1代目、僕が4代目です。

― 平泉という観光地をどう意識されていますか?

人が来るところなので、色んな人が来ます。観光地でないと、そういうのは難しいかなと思うんです。個人の工房がいくら魅力的だったとしても、今の観光客というのはそれに付随する、お寺や食べ物やお土産や、何かがないと楽しくないというのは大きいんですね。その中で一本立ちしたお店になりたいなとは思いますね。

― 秀衡碗の楽しみ方についてお客さんに伝えていることは?

僕は金箔だけなおして欲しいということは、受け付けていないんですね。どうしても周りとのギャップがでてしまう。お椀の縁が欠けたり、機能として使えなくなったらなおしますと伝えるんです。金箔部分が綺麗なまま一生そのままで使うのであれば、プリントでもいいわけで。時間が経つに従って、味わいがでてこないと本物な感じはしないかなと思っています。味って、使ってこないと出せないもんですよ。

― 技術はどうやって磨かれたんでしょうか?

30年近く工房にいた方に習いました。親父からは「自分がつくれないと職人さん達に指示をすることはできないからつくれ」と言われていて。あとは色んな場所で伝統工芸をやっている方とお会いする中で、自分の抱えている問題点を話す。話をしたことを、持ち帰った時にやってみる。そういうものの積み重ねです。僕がこの会社に生まれて一番よかったのは、老舗の看板というのがあるんですよ。対何代もお客さんがうちの会社に求めてきたクオリティや信用というものがあって、親父の代でやってきたことに、僕が追いつかないといけないわけですよね。それはある意味ありがたい。そこに早くたどり着かないといけないと夢中で技術を覚えていったところはあります。だから誰から何を教わったという意識はない。もう全部をかき集めて、何が最短で上手くいくんだということを探した。時間もないし会社も経営しないといけないし、ノウハウを身につけないといけなかったんです。それは色んな人に教わって覚えてきたことですね。

― ご家族から影響を受けたことはありますか?

おばあさんがとっておいた、おじいさんの古い写真や新聞の切り抜きを見ていて、やっていることが自分と一緒だと思ったりするんですね。だからそんなに間違っていないと安心したりするんです。二年前に死んだおばあさんと一つだけ約束したのは、僕が何もやらないで企業がダメになったら僕の力不足だけど、前向きにチャレンジした結果、企業がダメになったらそれは許してくれということ。おばあさんからは、「伝統なんていいからお客さんがとにかく欲しいものをつくりなさい。漆は外せないけど、お客さんが欲しいといっていることが全てなんだから」と言われました。「おじいさんはこれが伝統だとか、そういう部分だけみていた工芸の業界じゃないと思う」と。おじいさんの華やかな時もダメな時も全てを見てきたおばあさんだから、すごく心強い言葉だったなと思います。

― 秀衡塗の伝統についてどのように感じられていますか?

つくるということと、経営をすることを両天秤でちゃんとやっていかないと、自分だけが華やかに活躍をしても次の世代には繋がらないので、続く為に何が必要かということは考えていますね。お客さんからは期待もされるし違うんじゃないと言われることもあります。繋げてきていた先祖代々の方がいての今になるので、チャレンジしている姿勢を見てろよ~とは思いますよねやっぱり。その辺は見えないものですが、新しく漆をやる人に感じて欲しいことですね。

佐々木優弥(ささきゆうや)

1978年生まれ。岩手県在住。2004年より父の跡を継ぎ翁知屋の4代目代表となり店主を務める。全国の職人仲間との交流をヒントに、オリジナルの秀衡塗製品の開発を行っている。うるし塗り体験工房を構え、広い世代に向けて秀衡塗を伝えている。2012年グッドデザイン賞受賞。2013年パリ メゾン・エ・オブジェ出品。2013年ドイツ アンビエンテ出品。

http://www.ootiya.com/
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