東北STANDARD

カネイリミュージアムショップ

協賛: キヤノンマーケティングジャパン株式会社

宮城県仙台市

常盤紺型染

江戸時代後期、東北には絣(かすり)織りがなく、
絣の紋様を元に型紙をつくって染める「常盤紺型染」がうまれました。
秋田県の染め物屋「最上屋」が、仙台の染め物屋達に常盤紺型染の技術を伝えたことで仙台での生産が盛んになり、
体に馴染む柔らかさと、華やかではっきりあらわれる紋様から、全国的に親しまれました。

強度を保つ為常磐型には重ね合わせた和紙に柿渋を塗って燻した「渋紙」が使われました。紙と紙の間に糸を張る「糸入れ」によって紋様のくずれをふせぎました。

宮城県仙台市にある名取屋染工場では、古くから残る常盤型を復刻した手ぬぐいの製造をおこなっています。そこから車で30分程の場所にある仙台常盤型伝承館は、名取屋染工場のもう一つの工房。館主の佐々木邦子さんを訪ねてお話を伺いました。

― 常盤紺型との出会いについて教えてください

20何年前くらいにうちの蔵を掃除していた時に、箱に入った沢山の型紙がでてきたんですね。何の型紙だろうと思って。祖父が友禅染をしていたので、その型紙かと思って父に聞くと「常盤紺型」だと教えてもらったんですね。ほこりまみれだった型を洗いながら干すと、非常に斬新でモダンな模様がたくさんあったので、それを使って染めはじめたんですね。昔はコピー機がなかったので方眼紙に線をひいて模様を写し取って。

― なぜ型が保存されていたんでしょうか?

型は保存というよりも、蔵の中で箱に入っていたという感じでした。うちはもともと染物屋だったので、昔は常盤紺型や印(しるし)染で、暖簾や半纏や前掛けや、神社ののぼりをつくったりしていました。常盤紺型というのは戦後、大量生産の後で廃れてしまったんですね。用途としては主に農作業着や普段着として使われていて、あまり貴重品ではなかったので、見つけるのが大変なくらい残っているものが少なくて。それでも残っていた型紙は800枚ほどあってとても驚きました。調べてみると明治から昭和のはじめにかけてつくられたもののようです。

― 今みてもすてきな紋様のものばかりですね

大絣なんかこんなに派手な着物を昔の人は着たのかしらと思うほど。昔の人は技術もそうだけど、感性もすごいなと思いますね。自然と接するのがすごく多かったからじゃないでしょうか。雨絣だとか水絣だとかそんな風な名前がついているんですよね。自然から色んな紋様をもらったりしているような気がしますね。

― 流行の紋様のようなものもあったのでしょうか?

確かではないけれど、きっとそうだったんだろうなと思いますね。父が生きている時にもっと聞いておけばよかったなと思っています。

― 常盤型染の良さはどんなところにありますか?

例えば普段着と普段着でないオシャレなものに、使いわけができます。沢山の色を加えて染めたり、一色で染めたりしても全部面白い紋様になるので、生活に使える範囲が広いんじゃないかと思いますね。庶民の染めだと思います。

― 手ぬぐいも今の生活にとりいれやすいものの一つですね

手ぬぐいは若い人たちが愛してくれていますから、そういう意味では常盤型のいい紋様を手ぬぐいに活かしていけたらと思っています。常盤型染は縦が30cm横が38cmくらいの幅でつくっていくんですが、手ぬぐいの場合は33×90cmという大きな型紙を使うんですね。それで一度に10枚くらい染めることができます。「注染」という日本古来の大量生産の方法ですね。手ぬぐいの場合は糊を乾かさなくても濡れたままで染めることができるので、すごくスピーディーにつくることができるんです。一枚でもズレると10枚すべてダメになるので難しいですけどね。

― 常盤型染はこれからどんな風に伝わっていくと思いますか?

昔の人は紋様も技術的なことでも一生懸命工夫していたとは思うんですが、時代と共に結局は廃れていってしまいますよね。そうすると昔の職人の心とかそういうものが無くなってしまうのがもったいないなと思って。私も少しでも伝えられたらと染めはじめたんですが、常盤型染をどう活かしていくといいかとは毎日考えているのですが、なかなか難しいと思っています。本当はもっとみんなに知られて世の中にでていけば一番いいんでしょうけど、引き継いでくれる人がいないこともあって。できるだけ沢山の方に使ってもらえるように珍しいものをつくって、常盤型染を伝えていけるといいなと思っています。

佐々木邦子(ささきくにこ)

1937年生まれ。宮城県在住。染物屋で生まれ育ち、幼少時代から染めに親しみながら1977年に常盤紺型の型紙に出会ったことをきっかけに、常盤型の製品をつくりはじめる。2004年6月仙台常盤型伝承館が開館し館主を務める。常盤型製品の開発、常盤型染ワークショップの開催、様々な美術館や商業施設などでの展覧会開催など、常盤型を伝える為の活動を広く行っている。好きな色は常盤型染のピンク色。

名取屋染工場

・仙台常盤型伝承館
住所: 宮城県仙台市若林区文化町3-24
営業時間: 毎月第2週目火曜日-日曜日
11:00-17:00(要事前確認)
電話番号: 022-295-2860
・染め工房オンラインショップ
http://www.some-kobo.com/

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