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山形県米沢市

お鷹ぽっぽ

「お鷹ぽっぽ」に代表される笹野一刀彫は、山形県米沢市笹野地区に伝わる木彫玩具です。
お鷹ぽっぽの“ぽっぽ”とは、アイヌ語で“玩具”という意味。
米沢藩主上杉鷹山公が、農民の冬期の副業として工芸品の製作を奨励したことにはじまり、
魔除けや“禄高を増す”縁起ものとして、親しまれてきました。

笹野一刀彫の「一刀」にあたる刃物

笹野一刀彫と呼ばれる木彫玩具には12種類あります。中でも代表的なものがお鷹ぽっぽです。切り出された木を「サルキリ」と呼ばれる刃物一刀で彫りあげ、数分で完成します。

山形県最南端に位置する米沢市。市内から約5kmの笹野地区で笹野一刀彫は生産されています。笹野観音堂で開催される花市も間近となる雪深い時期に、笹野一刀彫「鷹山」6代目の戸田寒風さんを訪ねてお話を伺いました。

― 笹野一刀彫のお仕事を初めてからどのくらいになりますか?

僕が笹野一刀彫をはじめてからは約50年になります。笹野一刀彫は昔から農民の副業であったわけですが、僕自身としてはこれ一本で生きていこうと20歳前には思っていました。副業ではなく専門の仕事にしたのは、僕が最初だと思います。

― 戸田さんが初めて笹野一刀彫をされたのはいつですか?

小学校五年生の時ですね。最初に手を切ったので今でも覚えているんです。「痛いか。怪我をしないように覚えろ」と、親からはその一言でした。僕はサルキリは、4丁か5丁使っていて、自分で型をとっています。どの刃物でも手に馴染むんです。刃物自体が自分の手だと思わないとダメですから。

― サルキリとはどんな意味なのですか?

なぜそう呼ばれているのかはわかりません。アイヌの言葉にも、この辺りの言葉にもそういった言葉は残っていません。

― それにしても何故、一つの刃物だけでの木彫が
この地区にはじまったのでしょうか?

上杉鷹山公は「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」と説いています。そして一つの刃物で物を彫るように指導したという言い伝えがあります。この考え方が長く一刀彫が続いてきた理由かなと思っています。日本で一つの刃物だけを使ってつくる木彫りは殆どなく、全国の職人展で様々な地域の木彫り職人の方と会いますが、皆さん何刀か使っていらっしゃる。

― 一本の木を一刀の刃物で彫り上げるなかで、造型をつくる。日本にしか産まれなさそうな工芸品でもありますね

アメリカやブラジル、海外でも実演販売をやってきましたが、やはり珍しいようですね。台湾では列ができます。毎日買いにこられる方もいらっしゃいます。大きな刃物一刀でつくることにビックリされますね。その国ごとの木彫りはありますが、僕らみたいに荒削りというか、その場で彫り上げることは少ないんでしょうね。

― お鷹ぽっぽのポイントとなるところはどこですか?

本来は羽が重要なんですが、僕は顔の形が好きです。木を見て顔の向きをどうするかといった判断をします。

― 戸田さんはどんな意識でものづくりをされていますか?

一番大事なことは、お客様に買って頂くということになると思います。工人の誰しもがそうだと思いますが、その家系が繁栄するように、笹野一刀彫を飾ったことで会話が増えるようにと、心を込めて彫っています。

― つくり続ける中でどのような挑戦をしてきましたか?

お客さんが喜ぶものや、一つしかないものをつくることが、僕ら職人の原点でもあります。僕は人とは違うものがつくりたい。お鷹ぽっぽをつくる時に、皆が捨てるような材料を使ってみたり、枝や木の末端を素材に試したりしました。木の皮をつけたまま、本来の自然の風合いをつけたりということもやってみましたね。そんな挑戦をずっとやってきました。同じものを長くつくっても、同じものを何度も飾る人は少ないですから。アイデアを込めながら、新しいものをつくっていかないと伝統とい うものは守れないのかなと思います。

― これから先、お鷹ぽっぽづくりはどうなると思いますか?

どんな商品でもサルキリの中に心を込めていれば、お客さんはついてきてくれるなとは今でも思います。今一番の悩みは後継者を育てるということなんですね。ここ10年くらいの間に何人かに教えたけれど、若い人達は怪我も多いし、耐える心がないというか、残らないですね。これから先にお鷹ぽっぽが絶えていくということはないと信じていますし、今は後継者を育てたいという気もちでいっぱいです。

戸田寒風(とだかんぷう)

1949年生まれ。山形県在住。鷹山6代目。笹野一刀彫工人。11歳の頃に笹野一刀彫に初めて携わる。1949年より「寒風」を名のる。製品の制作の他、国内外で笹野一刀彫の実演販売を行なうなど、広く笹野一刀彫を伝える活動を行なっている。

http://www.kanpu.net/
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